福島県双葉町は復興再生へ向け、確かな一歩を踏み出した。
東日本大震災から間もなく9年目を迎えようとしている2019年11月。福島県の原子力被災12市町村のうち、町のほぼ全域が帰還困難区域となっている双葉町では現在、町の復興再生に向けたさまざまな取り組みが行われています。農業再開に向けて農地の保全管理を担う生産者の姿と町の復興再生計画からは、双葉町の未来の光が感じられます。故郷に緑の大地を取り戻すために尽力する、双葉町の現状と未来をご紹介します。
復興・再生を目指す双葉町の取り組み
東に太平洋、西に阿武隈高地を臨む福島県双葉町は、海と山に抱かれた豊かな自然を誇る町です。福島県浜通り地方のほぼ中央にあたり、比較的温暖な気候が特徴で、東北地方にありながら冬は積雪が少なく、とても住みやすい自然環境に恵まれています。
現在は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、帰還困難区域と避難指示解除準備区域に指定されており、全国へ避難した町民は未だ避難生活を強いられています。
しかし、双葉町はかつての姿を取り戻すため、一部地域における2019年度末までの先行的な避難指示解除を目指して取り組んでいます。さらに、「特定復興再生拠点区域内」の整備を順次進め、2022年春頃までの同区域内の避難指示解除を目指しています。
「双葉町を復興・再興していく道は険しく、長い年月がかかるものと見込まれます。今後、町民が生活再建を果たし、美しいふるさと・双葉町を取り戻していかなければなりません」と、復興を誓う双葉町産業課農林土木係の佐藤照智さん。
そのミッションのひとつが町の基幹産業である農業の再生です。町からの要請を受け立ち上がった生産者の澤上榮さんは、双葉町農地保全管理組合長として農地を保全し、営農再開につなげていく活動を行っています。
営農再開を復興と農業再生の先駆けに
双葉町農地保全管理組合長の澤上榮さん
避難先のいわき市から故郷の双葉町に通う澤上さんは震災前、兼業農家として約4haのほ場で水稲栽培を行っていました。避難を余儀なくされ、営農再開は難しいと考えていたそうですが、いわき市内の未使用のほ場を目にしたとき、農業への熱い思いがよみがえったと話します。
「じっとしていても仕方がない。やれることからやってみようと、農地をお借りして水稲栽培を始めました。いつか双葉町に戻り、農業を再開できる日を信じて今日まで過ごしてきたように思います」。
2018年に発足した双葉町農地保全管理組合は澤上さんを筆頭に、認定農業者等9名のメンバーで除草剤散布や草刈りを行っています。除染は実施済みであるものの、長年放置された農地には津波によって流されたがれきが地中に埋まっている個所もあり、本格的な再開はまだ時間がかかるというのが現状です。しかし、農地の保全管理は、生産者が双葉町に戻るきっかけとなり、営農を再開することで町全体の再生にもつながると澤上さんは期待を寄せます。
「農業を再開したくても、荒れた農地のままでは耕作すらできません。町に帰還後、すぐに農業を再開できる環境をできる限り作っていきたいですね」と、澤上さんは前向きな明るい笑顔で話してくれました。
保全管理するほ場を草刈する澤上さん
農業の再生に向けて始動した双葉町では2019年9月から、避難指示解除準備区域の両竹(もろたけ)地区で、町内では初めての試みとなる野菜の実証栽培をスタートしました。栽培品目はコマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、カブの5種類。収穫する野菜の放射性物質を検査し、基準値を下回った場合は県が出荷制限などの解除を国に求め、営農再開に弾みをつけたいと収穫が待たれていました。しかし、台風19号の影響により、定植した野菜が冠水し、実証栽培は一時断念することに。肩を落とす関係者が多いなか、澤上さんは前向きな言葉を語ってくださいました。
「今回作付けした5品目の野菜は、避難区域が設定された12市町村のうち、双葉町以外は帰還困難区域を除いて放射能検査の結果により出荷制限が解除されています。9年待ったのだからまだ待てます。来年の収穫を目指して頑張るだけです」。
新規就農者の受け皿として、魅力ある町づくりを目指して
双葉町産業課農林土木係の佐藤照智さん
双葉町では魅力ある住環境と確固たる産業基盤を備えた町の再興を図る整備を進めています。産業団地の建設や企業立地協定も増えており、J R双葉駅を中心に新たな生活の確保と既成市街地の再生を推進しています。
「生産者の中には高齢化や後継者不足などを理由に、離農をする方が増えているのも事実です。町の整備と共に、新規就農者が双葉町で農業をやってみたいと思える環境整備にも取り組んでいきます」と、佐藤さん。
双葉町の復興に向けて前向きに力強い一歩を踏み出しています
「待っていてください」と、前を見て笑顔で語る澤上さん
春には緑が芽吹き、秋には収穫の喜びに満ち溢れていた双葉町は今、確実に復興に向けた一歩を踏み出しています。
「もう少し時間はかかるけれど、待っていてください」と語った澤上さんの笑顔に、取材者であるわたしたちが元気をもらったとある晩秋の日。この地で農業を始める新規就農者にとっても、双葉町は夢と希望をもたらしてくれることでしょう。
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福島県双葉町 産業課
いわき事務所:福島県いわき市東田町2-19-4
T E L:0246-84-5214
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