農業体験で知る、福島の今と未来。『福島県相双地域農業体験バスツアー』に潜入レポート!

新規就農者がまず考えるのは、どこで何をつくるかということ。地域の風土や作付け可能な作物を知ることで自分に合った農業を見つけることが大切です。そこでおすすめなのが農業体験。福島県の相双農林事務所が一泊二日の行程で開催した『農業体験バスツアー』では、農業法人や直売所への訪問、作業体験などが実施されました。ツアーをレポートし、参加者の生の声をお伝えします!

目次

福島県相双地域の『農業体験バスツアー』

今回のツアーで巡る地域は、福島県浜通り北部の相馬地域、双葉地域を指し、それぞれの頭文字を取って『相双地域』と呼ばれています。良質な農産物を育んでいるのは豊かな自然、そこに暮らす人々のあたたかさです。ツアーでは、大規模農業法人や先輩就農者、直売所への訪問や作業体験を実施。相双地域の農業の特徴や販売方法、雇用あるいは自営就農するためのプロセスなどの知識を深めることを目的としています。
秋の気配が感じられる8月の終わり。就農を考える7名の参加者のみなさんと共に一泊二日の農業体験バスツアーがスタートしました!

復興を目指す花き栽培に取り組む農業法人と、飯館村の里山暮らし

飯舘村の農家レストラン『氣まぐれ茶屋ちえこ』

一行が最初に訪れた飯館村は、阿武隈山地の北部に位置する自然豊かな山村です。
『日本で最も美しい村』に選ばれたこの地にある農家レストラン『氣まぐれ茶屋ちえこ』で昼食をいただいた後、花き栽培に取り組む『福相農園』を訪問。同農園はブロッコリーやジャガイモ、タマネギなどの栽培を行っていましたが、東日本大震災における原発事故の影響により、一時は避難を余儀なくされました。しかし、避難先でも営農を続け、避難指示が解除されるとすぐに帰村し、営農再開しました。その再、当時はより厳しかった風評の状況を鑑み、花き栽培に転換した経緯があります。

現在、13名のスタッフと共にヒマワリ、スターチス、カスミソウなどの美しい花々を育て、復興への道を歩んでいます。代表の渡辺春治さんから語られる復興への思いや花き栽培の楽しさに真剣に耳を傾ける参加者。設備にかかった費用、収入など具体的な質問が多く寄せられていたのが印象的でした。

続いての訪問先は、飯舘村内で“農のある暮らし”を実践している長正増夫さん邸。米、ソバ、エゴマ、キュウリ、トマトなどを栽培する長正さんは自給自足の里山暮らしを送っています。見渡す限りの長閑な風景に見る四季の変化は豊かな心を育て、人間本来の暮らしを体感できると里山で暮らすメリットをお話くださった長正さん。「農業は人生そのもの」と語る長正さんの言葉に力強く頷く参加者からは、「飯館村の美しい自然を前に、就農への思いが一層強くなりました」と、感想が寄せられました。

教えて! 就農者に聞く、農業の楽しさとやりがい

南相馬市の宿泊先では、相双地域の各市町村との意見交換や、先輩就農者の実体験を紹介するプレゼンテーションが行われました。各市町村の概要や復興に向けた取り組み、就農支援などに真剣に耳を傾ける参加者のみなさん。「就農後の暮らしに役立つ情報を得ることができました」と、有意義な意見交換会に満足いただけたようです。

先輩就農者として登壇いただいたのは、相双地域初の農業生産工程管理手法(JGAP)の認証を受けた『株式会社グランファーム』の後藤直之さんと、南相馬市でネギの安定的な流通により、大規模農業化を実現している『南相馬ねぎ出荷組合株式会社』の田岡義康さんです。お二人からは就農に至った経緯や経営のあり方、農業の楽しさなど、就農を目指す参加者に熱いメッセージが寄せられ、質疑応答では活発な意見が交わされました。その後の懇親会でも大いに盛り上がりをみせ、充実した1日目を終えました。

直販と、独自の流通確保で安定経営を維持する法人農家を視察

スッキリとした初秋の風が心地よく感じられたツアー2日目は、南相馬市にある『株式会社美野里ファーム』への訪問からスタート。2016年に設立された同法人は米、ブロッコリー、トマト、ホウレンソウなどを栽培しています。米は地元のお弁当屋さんを中心に全量を直販するという経営を行う同社。視察では精米機や乾燥機などの設備を見学。直販による利益率、年収などの質問をする参加者も。農業で生計を立てることを真剣に考えている姿が伺えました。

前日の意見交換会にも参加いただいた田岡義康さんが代表を務める『南相馬ねぎ出荷組合株式会社』では、15haという広大な農地を効率よく活用するためGPSを使って正確に直線上に定植するスマート農業を積極的に活用しています。「就農をしたらスマート農業を積極的に取り入れたいと考えていたので、大変参考になりました」と話すのは、農家出身の参加者。自身は家業を継がずに就職したものの、いつかは地元で農業がしたいと考えているそうです。作業体験ではトラクターによるネギの定植、収穫を実施。大地の恵みを実感しながら汗を流す参加者の皆さんの表情はとても楽しそうです。

浪江町認定新規就農第1号『鈴の木ファーム』を訪ねて

参加者にアドバイスを送る鈴木さん(中央)

最後に訪問したのは、日本一農業が盛んなまちを目指す浪江町にある『鈴の木ファーム』です。震災前、婦人服縫製会社を経営していた鈴木好道ご夫妻は、東日本大震災で被災し、いわき市へと避難。廃業を余儀なくされます。そこでご夫妻は町の避難指示が一部解除になったことを機に、出身地である浪江町で新規就農を決意。現在、浪江町認定新規就農者第1号としてトルコギキョウやストックの栽培を手がけています。

「就農をする上で大切なのは関係機関とコミュニケーションを図り、積極的情報収集すること」、「作りたい物に適した土壌をつくっていくことが重要」など、参加者に具体的なアドバイスを送っていた鈴木さん。異業種から花き農家として活躍する鈴木さんの体験談は、参加者のみなさんにとって、とても参考になったようです。

視察、意見交換会、作業体験と盛りだくさんの内容に、参加者からは「農業への情熱が感じられた」、「収入につなげていくためのヒントを得られた」、「復興に向けて力強く歩む姿に勇気をもらった」などの声が寄せられました。

次回の相双地域バスツアーは、2019年10月26、27日に予定しています。実り多い晩秋の相双地域の魅力を、体験型ツアーで体感してみませんか?
※バスツアーは台風19号の影響により実施見合わせとなりました。今後のイベントについては相双ポータルサイトでご確認ください。


【ツアーに関するお問い合わせ】
株式会社JTB仙台支店「相双地域農業体験バスツアー」係
TEL:022-263-6716
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【就農に関するお問い合わせ】
相双農林事務所農業振興普及部地域農業推進課
TEL:0244-26-1149


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