【福島県新地町】徹底した効率化がもたらす「安定経営」。『株式会社グラン・ファーム』の営農スタイルとは
日本の農業は長く家族経営が主流であり、その技術や知識は親から子へと受け継がれていました。しかし、ここに現代農業が抱える問題が潜んでいました。後継者が途切れると継承が困難となり、農業者は減少傾向となっています。
そんな農業の現状に疑問を抱き、新規就農者でありながら法人化を実現したのが福島県新地町の『株式会社グラン・ファーム』です。
その営農方針には徹底した効率化と古里の風景を守る思いが込められていました。
目次
福島県の北の玄関口「新地町」ってこんなところ
阿武隈山系からのびる丘陵の間の平地に広がる田畑や果樹園、遠浅の澄んだ海とどこまでも続く砂浜…。
この美しい風景のある町、福島県新地町は、宮城県の県境に位置する7㎞四方ほどの小さな町です。
福島県の北の玄関口でもある新地町の気候は四季を通して温暖であり、農業では水稲をはじめ野菜、果樹、花きなどが栽培されています。
また、親潮と黒潮がぶつかる潮目の釣師浜漁港には、カレイ、ヒラメなどが水揚げされ、山と里、そして海と、実り豊かな町としても知られています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、甚大な被害を受けた新地町ですが、復興に向けて着実に歩みを進め、2017年にはJR常磐線と新地駅を中心とする新しいまちづくりをスタートさせました。
駅の周辺には交流・商業施設や住宅が立ち並び、隣接する相馬港でLNG(液化天然ガス)基地を軸にした関連産業の誘致と雇用創出に取り組んでおり、さまざまな生活・産業機能を集積したコンパクトシティを目指しています。
徹底した効率化を目指す『株式会社グラン・ファーム』設立の背景
『株式会社グラン・ファーム』代表取締役の後藤直之さん
町が一丸となって復興を進める新地町で、2016年に『株式会社グラン・ファーム』を設立したのが代表取締役社長の後藤直之(ごとう なおゆき)さんです。
兼業農家出身ではあるものの、農業に従事はせず、会社員として安定した暮らしを送っていた後藤さんですが、東日本大震災による津波で田畑を失い、離農する農家が後を断たない現状を目の当たりにし、就農を決意します。
「実家の田植えや稲刈りは家族総出で手伝うのが当たり前。会社を辞めて就農することにそれほど戸惑いはありませんでした」。
と、話す後藤さんは就農するにあたり、家業をそのまま継ぐのではなく、農業法人として起業することを決意。
そこには農業の先を見据えた決断があったと話します。
「農家の労働力不足や後継者問題は、これまで家族経営に頼ってきたことが原因の1つだと思います。法人化し、企業として雇用することで職業としての農業が確立されると考えました」。
『株式会社グラン・ファーム』の事務所
祖父や先輩農業者の指導のもとで栽培技術を磨いた後藤さんは現在、5名の従業員と共に約60haのほ場で水稲栽培を中心に会社を運営。
経営方針の「必要とされる品質と収量を確保すること」には、限られた労働力による、効率的な営農スタイル実現への思いが込められています。
里山の風景を取り戻すために目指した「効率化」
『株式会社グラン・ファーム』では毎年1月から2月にかけ、作付けする品種や収量について、取引先とすり合わせをします。
これにより無駄なく効率的な営農ができていると後藤さんは分析します。
「作ってから売るのではなく、求められる品質、量を作ることで効率化にもつながっています。また、作付けしている時はすでに売り先が決まっているので、売り上げの見込みを立てることもできます」。
作業内容や肥料、トラクタの運行状況をクラウド上で一括管理するスマート農業もいち早く取り入れた同社。
1年の農作業の終わりを告げる ”稲刈り” 。コンバインを操作する後藤さん
相双地域では初めてとなるJGAP認証取得も、栽培工程の明確化と品質証明の1つとして取り組みました。
「これからの農業を考えると、プレイヤー(就農者)の確保は重要です。そのためには従来の農業の負のイメージではなく、ひとつの職業として魅力を感じてもらうことが大切です。そのためにもスマート農業をどんどん取り入れ、経営の安定化を図っていきたいですね」。
トラクタの調整作業を行う、入社して3カ月の柴澤さん
後継者不在の近隣農家などから水田を借り受けながら、現在では町内でも有数の規模となっている『株式会社グラン・ファーム』。
今後は、スタッフの雇用・育成にも力を入れ、将来的にはスタッフが独立し、意欲に満ちた農業の担い手が町内で活躍することを目指しています。
「震災前、新地町は日本の原風景ともいえる里山の風景が広がっていました。農地は復興事業により、震災前の姿を取り戻していますが、耕す人がいないのが現状です。町を象徴する実りの景色を取り戻すことが、農業法人としての地域貢献だと考えています」。
春の田植え、青田が広がる夏、そして、黄金色に輝く稲穂の風景は新地町の風物詩です。
企業として、さらにはファーマー集団として町の農業復興に尽力をする『株式会社グラン・ファーム』は、さらなる効率化と発展を目指しています。
福島県相双地域の就農支援について
新地町が属する福島県相双地域では、新規就農者に対するさまざまな支援を行っています。
相双地域新規就農企業参入推進検討会議構成メンバー(市町村・JA・県等)が中心となり、相談者ごとに就農サポートチームを結成。
就農するまでの間、ワンストップで各種情報の提供やマッチングを行います。
また、独立就農に活用できる給付金や各種事業も整備されています。
農業を始めたいという方はぜひ、問い合わせを。
■問い合わせ先■
福島県新地町役場 農林水産課
住所:〒979-2792 福島県相馬郡新地町谷地小屋字樋掛田30
新地町役場までのアクセスはこちら
電話:0244-62-2194
新地町役場ホームページはこちら
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