【福島県大熊町】 “誰でも働ける農業“を実現するイチゴ植物工場で町に産業を! 最新鋭の設備で目指す日本一安全なイチゴづくり

“フルーツの香るロマンの里”として知られる福島県大熊町はかつて、梨やキウイフルーツなどの産地としてそのおいしさを全国に届けていました。東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で町の農業は大打撃を受けましたが、復興を目指す同町に光をもたらしたのがイチゴ栽培に特化した『ネクサスファームおおくま』の設立です。最新鋭の設備と徹底した品質管理による日本一安全なイチゴづくりとは?ネクサスファームおおくまが取り組む『イチゴ植物工場』の秘密に迫ります。

目次

四季成り性品種栽培を可能とした「イチゴ植物工場」とは?

イチゴ栽培事業を計画立案段階から牽引してきた徳田辰吾取締役工場長

東京電力福島第1原子力発電所事故による避難指示が2019年4月に一部地域で解除された福島県大熊町に明るいニュースが飛び込んできたのは8月19日のこと。今春完成したネクサスファームおおくまのビニールハウスで栽培されたイチゴの出荷を祝う式典が行われ、設備や作業が関係者やメディアに公開されました。

そこに映し出されたのは高さ約4.5mのビニールハウスを連ねた巨大な施設。その広さはなんと、約2.9ha! コンピューター制御でイチゴ栽培を可能とする最新鋭の設備を有しています。これにより、イチゴの周年栽培と周年出荷が可能になると徳田辰吾工場長は話します。

「発光ダイオード(LED)や養液を使い、コンピューター制御でイチゴを栽培しています。太陽光と人工光を併用することで、この地域では難しいとされていた四季成りイチゴ(夏秋イチゴ)の栽培が可能になりました」。一般的なイチゴ農家で栽培される品種は『一季成り』と呼ばれ、冬から春にかけて出荷されます。収益の安定確保のためには四季成りイチゴ栽培との併用が理想ですが、夏でも涼しい高地でしか栽培できない品種のため、平地では難しいとされてきました。

ネクサスファームおおくまは最新鋭の設備を導入することでそれを実現。同社では今後、夏秋出荷の加工用品種『すずあかね』のほか、冬春出荷の生食用品種『かおり野』、『とちおとめ』、福島県育成品種の『ふくはるか』など計6品種を栽培する予定です。

作業負荷を減らし、継続可能な農業モデルを確立

コンピューター制御で太陽光とLEDによる光を管理

ネクサスファームおおくまでは年間を通した収益を確保すると同時に、スタッフの負荷を減らす作業改善と労働生産向上のための仕組みづくりを行なっています。「農業人口が減っている原因は後継者問題や労働力不足などさまざまな要因が考えられますが、その1つが過酷な労働条件だと考えます。そうしたなか、働き方を見直すことで農業を持続可能な産業へとつなげていくことができるのではないでしょうか」と、話す徳田工場長。

例えば、栽培用のベンチは作業者の負担にならない高設栽培を採用。運搬作業においては作業台を調整し、重い物でも簡単に上げ下げができるよう工夫がされています。「一般的なビニールハウスでの夏の作業は過酷ですが、当社ではヒートポンプを活用することで温度調整をすることができます。イチゴの生育に適した温度管理とスタッフが作業しやすい環境のバランスを取ることで作業効率の向上を図っています」。

徳田工場長の言葉を裏付けたのは、スタッフのテキパキとした作業の様子です。盛夏のビニールハウス内でありながら、快適な室温で作業を行なう姿が印象的でした。

また、それまで勘や経験に頼りがちだった農業を環境や生育状況、作業内容などをデータ化し、分析することで経営に最適な生産体制を構築することにも力を注いでいるとのこと。こうした取り組みは“誰でもできる農業”につながり、農業未経験者はもちろん、高齢者や障害者雇用にも期待が寄せられます。

帰還町民の雇用と農業再生が最大のミッション

高さ約4・5メートルのビニールハウスを連ねたネクサスファームおおくま

原発事故による避難指示が一部解除されたとはいえ、町民の帰還は足踏み状態というのが大熊町の現状です。その原因の根底に雇用問題があると徳田工場長は話します。「町に戻りたくても働く場所がない、産業もないようでは生活をすることができません。また、震災から8年が経過した今も風評被害は根強く残っています。これらの問題を解決し、雇用の受け皿になることが当社の最大のミッションです」。

同社には現在、町内や近隣市町村出身者を中心とした8名が働いています。復興事業としてスタートしたネクサスファームおおくまを町の基幹産業に引き上げるためには、安定した経営と利益向上が必要不可欠。「利益をしっかり生むためには市場が求める品質、量、時期にイチゴを提供することが大切です。最新鋭の設備によって年間を通した安定供給ができる当社が町の産業として根付き、再興につながれば幸いです」。

選果作業を行うスタッフ

他業種で働いていた人が多く活躍しているのもネクサスファームおおくまの特徴です。農業未経験者だからこそ先入観にとらわれず、広い視野で作業効率を考えることができ、そこから新たなアイデアが生まれることもあるそうです。
同社が確立した“誰でもできる農業”は、大熊町の、さらには日本の農業の救世主的存在になることでしょう。

なお、大熊町は12月4日に仙台で開催される『マイナビ就農FEST』に参加します。ぜひお気軽にお立ち寄りください。
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■問い合せ
株式会社ネクサスファームおおくま
住所:福島県双葉郡大熊町大字大川原西平2127番地
電話: 0240-23-7671

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