【農業体験in福島県浪江町】先進的花き栽培の技術と営農を体感。見えてきた、目指すべき農業人の姿
新たに農業を志す人にとって、栽培品目の選択や農地の確保、営農のノウハウの習得など取り組むべき課題はたくさんあります。そうした課題をひとつずつクリアにするために最適なのが「農業体験・研修制度」です。福島県浪江町で花き栽培に取り組む法人のもとで農業を体験した一人の青年の経験を通し、農業体験・研修の重要性や、体験を通して見えてきた、目指す農業人の姿を紹介します。
目次
トルコギキョウの産地を目指す福島県浪江町の取り組み
福島県双葉郡北部に位置する浪江町。東北でありながら冬の積雪はほとんどなく、典型的な海岸型の気候を持つ過ごしやすい地域です。町の北部を流れる請戸(うけど)川、南部の高瀬川が河口近くで合流後、太平洋に注ぐ変化に富んだ地形では、山・川・海それぞれの利点を生かした農業・漁業などが営まれています。
自然豊かな浪江町を襲ったのが2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故です。全町避難を強いられた浪江町は一時、全ての営農がストップしたものの、2017年3月31日には一部地域の避難指示が解除。以降、営農再開に向けた取り組みが進んでいます。
トルコギキョウ
その浪江町が震災以降、力を入れて振興しているのがトルコギキョウをはじめとした「花き」栽培です。花きは食品ではないため、震災による風評被害を受けにくかったのです。浪江町の温暖な気候が花き栽培に適していることも相まって、トルコギキョウが作られることになりました。
その “花のまち・なみえ”に営農の可能性を見出し、農業体験に参加したのが福島県在住のAさんです。高品質なトルコギキョウ を栽培する「特定非営利活動法人Jin」での農業体験を通して得た学びや新規就農への心構え、今後の展望など率直な心境をお聞きしました。
農業体験は自分としっかり向き合う時間
福島市出身・在住のAさんは社会人6年目の29歳。仕事柄、農業法人や自営農家などから話を聞く機会が多く、やがて農業に強く関心を抱くようになったと話します。
農業体験者のAさん。ご自身で作成した計画表・今後の目標を持参しての参加。
「大学時代から潜在的に農業に興味がありました。実際に営農する方々の話を聞くことで自分でもやってみたいと強く思うようになったのが農業体験に参加した大きなきっかけです」。
自宅近くに農地を借りて野菜を栽培するAさんは、栽培品目には野菜を考えていましたが、就農するからには経営スタイルを確立し、利益を生む必要があるという思いに至った結果、浪江町が取り組む花き栽培へと関心が高まっていきました。
「花をもらって嬉しくない人はいません。喜んでもらえるものを作ることができる花き栽培は、自分が目指す営農スタイルのひとつです。作業内容や経営などを多角的に学ぶと同時に、肌感覚で花きが自分に合っているかを知るためにも、農業体験は必要だと思います」。
マルチへの穴あけ作業。金属製のパイプを火で熱し、その熱でマルチが溶けることを利用し定植用の穴をあけます。
休日を利用しながらJinに通い、花き栽培の作業を学ぶAさん。体験前に抱いていた農業に対するイメージとのギャップも少なからずあったと言葉を続けます。
「立ちっぱなし、座りっぱなしと身体的に大変な作業もなかにはあります。ただ、なぜこの作業が必要なのか、何が目的なのを考えることで一つひとつの手間には意味があることを知り、楽しく思えました。同時に、本格的に就農するためにはクリアしなければならない課題も浮き彫りになり、自分なりの尺度で納得・把握できたことは大きな収穫です」。
定植から収穫まで花き栽培には年間を通してさまざまな作業があります。体験後は短期・中期の研修へとステップアップし、経営のノウハウも学んでいきたいとAさんは今後の展望を力強く話します。
トルコギキョウの定植。苗は小さく繊細なため、ピンセットを使用しやさしく定植します。
「就農を目指す上でまだスタート地点にも立っていない自分ですが、生産者の方をはじめ、役場や関係機関の話をたくさん聞き、自分にとって何が理想的な生き方かを問いかけ、見つめ直す時間が農業体験だと思います。Jinでは代表の清水さんや、スタッフのみなさんが栽培技術はもちろん、経営のあり方なども惜しみなく教えてくれました。その恩返しのためにも真摯に農業に向き合っていきたいです」。
取材に訪れた6月下旬。Jinのほ場では出荷を迎えた色とりどりのトルコギキョウが大輪の花を咲かせていました。美しく咲き誇る花のように、Aさんの就農への夢もまた、やがて大きく花開くことでしょう。
満開に咲き誇るトルコギキョウ
地域出荷額1億円をともに目指す仲間をつくりたい
農業体験・研修生を積極的に受け入れる「特定非営利活動法人Jin」は、東京電力福島第一原子力発電所の事故からの復興に向け、2014年から花き栽培に取り組み、現在、トルコギキョウを中心に年間で約50種類、約12万本を生産しています。
特定非営利活動法人Jin代表の清水裕香里さん(左)・前代表の川村博さん(右)
「農業経験がまったくなかった私ですが、バラのように大きく咲くトルコギキョウの美しい姿を見て、それまで抱いていた花き農業への考え方が変わりました。花は人生のさまざまなシーンに登場し、贈る側も贈られる側も笑顔になる農産物です。浪江町の気候を味方に、栽培技術を磨けば単価の高い花を出荷できると思いました」。
と、話すのは、代表の清水裕香里(しみず・ゆかり)さんです。高齢者・障害児者の通所施設を運営していたJin が花き栽培をはじめた2014年、当時の代表・川村博(かわむら・ひろし)さんは福島県農業総合センターや相双農林事務所双葉農業普及所の指導を受け、さらには長野の花き農家に出向き、独自に勉強も重ねます。その甲斐あって、Jinが生産するトルコギキョウは市場で次第に高く評価されるようになりました。
「農業はキツい、汚い、儲からないと思われがちです。しかし、しっかりとした計画とやる気があれば決してそうではありません。365日、24時間、自分次第で自由に時間を使うことができる職業です。働き方、営農の仕方、収益の上げ方などわたしたちがロールモデルとなり、新規就農者に示すことで仲間を増やしていきたいですね」。
“トルコギキョウの産地”と認知されるには一般的に出荷額が1億円に達することで、やっとスタートラインに立つことができる厳しい世界です。浪江町に根差し、ともに「トルコギキョウの産地」を達成する仲間をつくることこそが今の目標と清水さんは話します。
「体験を通して知ってもらいたいのは、農業はがんばった分だけお金になること。時間の使い方や年間スケジュールの重要性を知ることで、目指す出荷売り上げをクリアするためには何が必要かが見えてくるはず。体験ですべてを学ぶのは難しいものの、実際の作業内容を知ることで感覚的に得られるものがあると思います。浪江町に根差し、この地で営農をする生産者の方々とともに“トルコギキョウの産地”を目指していきたいですね」。
震災から10年が経ったいま、浪江町の花きが農業振興への大きな礎になることが期待されます。
現在、浪江町をはじめ、双葉地域管内では20軒の生産者が花き栽培に取り組んでいます。“儲かる”農業のメソッドが確立された同地域でぜひ、花き栽培のノウハウを学んでみませんか?震災を経験し、全国からの支援に感謝する気持ちが広がる双葉地域が新規就農者をあたたかく受け入れ、営農のあり方や成功への道筋を、ともに歩むことで示してくれることでしょう。
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