相双地域で実際に就農した方や先輩就農者にインタビューしてみました。農業経験がまったく無かった若い力も続々と活躍しています。
若い力も育てて、地域の枠を超えた農業再興へ。
株式会社 紅梅夢ファームさま
東日本大震災に伴う原発事故によって、約13,000人の区民すべてが強制避難を強いられた南相馬市小高区。この地の再興をかけて、立ち上がったのが紅梅夢ファームの佐藤良一さんです。皆が避難を続けている状況でしたが、佐藤さんは震災のあった2011年の暮れから、小高区で営農再開ができる日を見据えて、小高区の15の集落によって組織された小高区集落営農組織連絡協議会を通じ、避難解除後の営農再開について話し合いをスタートしました。そこで区内の農家から営農再開の意向を調査したところ、高齢者が多いこともあり、85%が離農もしくは農地を委託したいという結果が出たこともあって、今後の小高での農業には農地の集積、そして、自立・組織化された大規模経営が不可欠だと判断しました。会議を毎月のように重ねてきた結果、7集落が出資し2017年1月に小高区内集落の横断的な担い手として『株式会社紅梅夢ファーム』が設立されました。
既に代表の佐藤さんは、一刻も早い小高区での営農再開を目指して、2012年には「ふるさと小高区地域農業復興組合」を組織し、区内の農地の草刈りや津波被災農地の瓦礫拾い等を行うため、小高区民を対象に作業員を募集して、農地の保全にも取り組んできました。また、営農面では、2012年には水稲の試験栽培をいち早く開始。2014年には菜の花栽培にも取り組み、2015年には菜の花オイル「浦里の雫」として商品化。道の駅や市内各店舗で販売され、南相馬市のふるさと納税返礼品にもなっています。
紅梅夢ファームは、初年度2017年には水稲9ヘクタールをはじめ、大豆、菜の花、玉ねぎ、計約28ヘクタールの生産でしたが、2018年には計約46ヘクタールへと農地を拡大。10年後には計230ヘクタールでの生産が目標とのこと。「地権者や委託集落とのつながりを保ち、農業との関わりを無くしてほしくないので、地区ごとに営農改善組合を組織していただいて、地権者との協議や、草刈り・水管理等の再委託を行っていくことを引き受けの条件としている」と、佐藤さんは小高の地域への熱い想いを話してくれました。
紅梅夢ファームでは、将来を見据え、農業の担い手を育てていくことが重要だととらえ、2018年には市内の農業高校から2名を新卒採用。若手の育成にも力を入れており、 「農業の知識がなくても、農業を学びたい!という意欲があれば成長できる環境です」と佐藤代表は語ります。
新入社員の飯部尚哉さんは「一人でなんでもできる農業人になりたい」、蒔田詩織さんは「女性だからできる農業を実践するロールモデルになりたい」と目標を語ってくれました。