相双地域で実際に就農した方や先輩就農者にインタビューしてみました。農業経験がまったく無かった若い力も続々と活躍しています。
川内村の農業再生へ。農地を守り伝えていく。
農業生産法人 株式会社緑里さま
東日本大震災に伴う原発事故の影響により、全村が避難地域に指定された川内村。この厳しい状況の中で村の農業再生を目指して立ち上がったのが河原修一さんです。河原さんは元々双葉地方森林組合に勤務する兼業農家でしたが、原発事故を受けて避難した2011年の秋に森林組合を退職。2012年に村内山林の保全管理を目的とした株式会社緑樹を設立しました。しかし、すぐに森林の管理作業があったわけではなく、すでに行われていた村の除染作業に従事することになりました。その時に、雑草が繁る田畑を見て、「手入れをしないと、農地が荒れ果ててしまう。村の農地を守り残していかなかればならない」と強い決意を固めたそうです。
2013年には福島県農業総合センターによるリンドウの実証栽培が実施されたのと同時に、河原さんもセンターの指導を受けながら、リンドウ栽培を開始。また、40アールの水田で実証栽培にも取り組み、放射性物質の吸収抑制効果の実証を行いました。そして、2014年に当時の避難指示解除準備区域が解除されたことにより、村の自宅へ帰還。2015年に株式会社緑樹の農業部門を独立させる形で設立したのが、株式会社緑里です。
2015年には20ヘクタールでの水稲栽培と、28アールでのリンドウ栽培で本格的な営農を開始。リンドウは市場関係者から「他の産地より長持ちする」と評価を受けたこともあり、徐々に栽培面積、品種数も拡大させています。また、2016年には3ヘクタールでのエゴマの栽培も開始。翌2017年には作付面積も5.5ヘクタールへと拡大。「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」の支援を受けて、新たなエゴマ油「振るオイル」の商品化にも成功しました。さらには、冬場に出荷できるホウレンソウのハウス栽培にも取り組み始めています。
川内村では今後も農地を貸し出したい農家が増えることが見込まれていることもあり、河原さんは、将来は水稲50ヘクタール、エゴマ10ヘクタールへの規模拡大を視野に入れています。その上で必要となるのが担い手の存在。現在、社員10 名と繁忙期にパートを雇用して運営していますが、経営規模の拡大に合わせ、今後も若い担い手を積極的に雇用していきたいとのことです。2017年に農業短大から新卒で入社した渡辺友貴さんは「現場は学校で学んだこととは全然違って難しいし、キツいことも多いけど、やりがいを十分に感じます」と話してくれました。