相双地域で実際に就農した方や先輩就農者にインタビューしてみました。農業経験がまったく無かった若い力も続々と活躍しています。
高い評価を受けるトルコギキョウを栽培。浪江町を「花のまち」に。
NPО法人Jin 川村博さま
町の面積の約8割が帰還困難区域に指定されている浪江町。この町で、震災後から花卉栽培に取り組んでいるのがNPO法人Jinの川村博さんです。川村さんは震災前、町で障害者や高齢者向けの福祉施設を運営していましたが、震災と原発事故による全町避難に伴い、通所事業を休止。それでも、川村さんは福島市・二本松市・本宮市でサポートセンターを運営し、仮設住宅で暮らす浪江町民を支援してきました。その中で、聞こえてきたのがお年寄りたちの「畑仕事をしたい」という声でした。2013年4月に浪江町の避難区域が再編され、町への出入りが可能になったタイミングで、事業所の隣に農園を造り、お年寄りたちに畑仕事をしてもらうと大喜びしてくれたそうです。「農業で浪江町を復興したい」と強く思うようになったそうです。
しかし、当初手掛けた作物からは基準値を上回るセシウムが検出されました。基準値以内に収まる野菜にしても、浪江町産ということで、どこのスーパーからも仕入れを拒否されてしまったそう。そこで、悩んだ末に活路を見出したのが出荷制限を受けていない花卉です。中でも、ブライダルや贈答用にも使われ、単価も高いトルコギキョウに目をつけました。福島県の営農再開支援事業の実証の場を提供しながら、2014年に初出荷。当初は決して高い値段がついた訳ではありませんでしたが、市場関係者からのアドバイスを生かすことで、徐々に品質を改善。次第に高価格で取引されるようになり、花卉栽培を軌道に乗せることができたそうです。
市場でも高い評価を受けるに至った川村さんですが、2016年には国際博覧会でも受賞歴のある長野県松本市の花卉栽培の第一人者の下に通い、更に高い栽培技術を学習。先生からは「私の教えた通りに造ることができたのは、川村さんだけだ」というお墨付きをいただきました。また、2017年には大田市場で卸売をしているフラワーオークションジャパンより、オリジナルブランド「Jinふるーる」のトルコギキョウが優秀賞として表彰を受けました。
川村さんは2017年に設立された「花・夢・創(はなむそう)みらい塾 浪江町花卉研究会」の会長に就任。町内で花卉栽培に取り組もうとしている農家や新規就農者に、その高い技術を伝えています。「近い将来の目標は、町としての花の出荷額1億円。UターンやIターンに関係なく 20 代、30 代の若い人が町に来て花を栽培してほしい。若い人たちと浪江町を花の一大産地にしていきたい」と川村さんは話してくれました。