相双地域で実際に就農した方や先輩就農者にインタビューしてみました。農業経験がまったく無かった若い力も続々と活躍しています。
農業で生きていく―。SEから転身した若き挑戦者が目指す新しい農業のカタチ
相馬市 横山圭吾さま
代々続く農業をここで絶やすのはもったいないー。そんな思いを抱き、システムエンジニア(S E)から農業へと転身した横山圭吾さん。 仙台市から故郷・相馬市岩子(いわのこ)地区にUターン就農を決意したのは、2019年8月のことです。
「祖父と父が手がける水稲栽培をたまに手伝う程度で、実は農業にはそれほど興味はありませんでした。 情報系の大学に進学し、S Eとして充実した日々を送っていたのですが、ふと家の状況を考えた時、土地も機材もあるのに継ぐ人がいない。 このままでは代々続いた農家が途絶えてしまうことに気がつきました」。
当時、社長賞を受賞するなどSEとして輝かしい未来が約束されていた横山さんですが、同時にワークライフバランスへの漠然とした不安を抱きながら仕事に追われていたそうです。 「自然相手の農業は栽培や収入面で苦労すると重々わかっていましたが、農業なら自分らしくのびのびと仕事ができると考えました」。
現在、約13haの広大なほ場で水稲栽培を手がけている横山さん。 自身の代からブロッコリーのハウス栽培を開始し、近隣の生産者からレクチャーを受けながら作物と向き合っています。 JA主催の勉強会にも積極的に参加し、栽培に関する知識を深めています。
2020年に自身で初めて、田植えから収穫まで年間を通じた作業を行う横山さんですが、これまでの経験を通して見えてきた課題もあるようです。 「これまでの農業は作業をする人の勘や経験に頼ってきた部分が多く、せっかく培った技術が次世代に継承されにくいという問題があります。得意とするI Tの技術で、栽培時期に合わせて灌水や農薬・肥料散布をデータ化し、そのデータに基づいた作業の効率化や栽培技術の確立と、生産者同士の共有を目指したいと考えています」。 今後はドローンによる農薬散布や農業機械の自動化も含め、新しい農業のカタチを示していきたいと、横山さんは力強く語ってくださいました。
「今年はデータ集積の年。それを近隣の生産者と共有して地域全体の農業活性化につなげたい。 農業は担い手不足の深刻化が叫ばれていますが、自分自身がモデルケースとなり、農業を魅力ある職業として発信していきたいですね」。