相双地域で実際に就農した方や先輩就農者にインタビューしてみました。農業経験がまったく無かった若い力も続々と活躍しています。
目指すは有機の米作り、そして浪江町の営農復興へ!
半谷 啓徳さま
双葉郡浪江町で、お米の専業農家をされている半谷啓徳さん。平成31年3月に独立・自営就農され、現在5年目を迎えられました。それ以前は県南地域にある大規模農業法人で約2年、農業に従事されておりましたが、お父様がもともと米作りをされていたので、いずれお父様から田んぼを受け継ぐのだろうと考えていたそうです。
自営就農を決めるきっかけとなったのは、震災後の知り合いのお話でした。「震災によって浪江町から避難を余儀なくされた方々が、今も避難先から浪江町へ通いながら農業をされている」という話を聞き、とても心を揺さぶられたと語ります。「浪江町を元の自然豊かな環境に戻したい」という想いが強くなり、ご実家の田んぼを受け継ぎ、浪江町で自営就農をすることを決められました。
農業法人を退職した後、まず取り組んだことは土壌改善。震災後から手つかずのままだった実家の土壌を、米作りに適した環境に整備することからスタートしました。全ての準備が整ったのは平成31年。お父様から受け継いだ10haの田んぼで米作りを本格的に開始されました。もともと浪江町で酒造店を営んでいた鈴木酒造店から「浪江の米で酒を仕込みたい」と依頼を受け、醸造用のお米の契約栽培をスタート。現在はコシヒカリやつきあかり、ひとめぼれ等の計6品種を栽培しています。「農薬・化学肥料を極力使わない、有機の米作りを目指し日々奮闘中です」と半谷さんは話します。
現在はいわき市にお住まいで、毎日いわき市から浪江町に通って農作業をされています。通勤に時間はかかるものの、生まれ育った土地である浪江町は、とても落ち着くのだそうです。幼少期から見ていた米作りの風景、春には水入れ、秋には収穫が行われる田んぼの様子を見て育った半谷さん。実際に自分が就農して田圃を耕す側になったことが感慨深いと語っていらっしゃいました。
1年を通して温暖な気候のため、何でも作りやすく、米以外の作物を手掛けている農家さんも多くいる浪江町。周りの農家さんとの交流も多く、「浪江町の自然を取り戻そう」という共通の想いで互いに応援し合う温かい地域だと話します。
ご自身の経験から、就農したいけど何の作物を育てたらいいか分からなかったり、「自分は雇用型と独立型どちらが向いているのだろう」と悩まれている方に向けて、ぜひ「雇用型」から入ることをおすすめしたいと、半谷さんは言います。様々な作物や働き方に触れていくうちに、自分のやりたい農業の形が見えてくるはず。ご自身もまず農業法人で学ぶことを選ばれたからこそ、今に活きていると感じるのだそうです。
「迷ったらとりあえずやってみる」
失敗に臆せず、いろいろなスタイルの農業にチャレンジした半谷さんだからこそ、語れる言葉がありました。